10億ドルの稼ぎ方と、「PRは無料ではない」という話
10億ドルを稼ぐ方法
ポール・グレアム(Paul Graham)は、米国最大の起業インキュベータY Combinatorの創業者であり、『ハッカーと画家』の著者としても知られる起業メンターです。いまは引退し、シリコンバレーを離れて英国の田舎に住んでいます。

今年6月10日、オックスフォードの学生団体の招きで講演を行いました。題はかなり直球で「How to Make a Billion Dollars」です。内容が面白かったので、いくつか抜粋します。
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億万長者になるには違法・非倫理的な手段が必要だ、と思っている人もいるようです。難しいのは確かですが不可能ではなく、機会は想像より大きい、というのが彼の見方です。
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21年前の2005年にYCを始め、これまでに約6500社に投資。その創業者のうち、すでに約30人が10億ドル級の資産家になり、さらに接近中の人もいます。6500社・創業者を仮に2万人とすると、30人は決して「ゼロに近い」確率ではありません。
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彼らの道筋は、いずれも成功する会社を創ることです。
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先日ある創業者に成長率を聞くと「先月は93%」だったそうです。純資産も同じペースで伸びうる、という意味です。いま純資産が200万ドルで自社に全額乗っているなら、会社が500倍になれば10億ドル級。では500倍まで何か月か。
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月93%が続くなら、底1.93のlogで500——答えは約9.45。つまり月93%を九か月半続ければ500倍、という計算です。だから彼が創業者にまず成長率を聞くのです。
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「93%は非現実的」なら月15%でどうか。1.15の60乗(5年)は約4384倍。月収1万ドルなら5年後は月約4400万ドル、年換算約5.26億ドル。創業者として株式を持っていれば、10億ドル級は十分射程です。月15%は年換算でも5.5倍未満で、多くのスタートアップが達成・超過しうる水準です。二十代前半で創業し高成長を保てば、三十歳前後で10億ドル級は「絶対にあり得る」——というのが彼の主張です。
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高成長を保つ鍵は、口コミで広がるほど良いプロダクトを作ること。成長率は「正しいプロダクトかどうか」の鏡でもあります。
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自分が本気で作りたいと思うものは、どれほど突飛でも良い起業アイデアになりうる。2006年に投資したJustin.TV(後のTwitch)——頭にカメラを付けて生活を配信する一人会社——より突飛なものはそうそうない、という例です。
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起業の鍵は、特定ユーザーを深く理解し、本当に欲しいものを精密に作ること。何をすれば生活が明らかに良くなるか——それが共感であり、YCが創業者に求める資質です。
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結局のところ、起業で10億ドルに至る決定要因は二つ。**成長率(好きでシェアしたくなるプロダクト)と、成長の持続時間(大きな市場)**です。指数成長で大きな市場を取れれば企業価値は跳ね、株主としてのあなたも富む、という構図です。
PRは無料ではない
SQLiteの作者Richard Hipp氏は、インタビューで、なぜ外部PRを一切受けないのかを説明しました。

「新しい機能のPRを出した。無料だよ」と言われても、それは無料ではない、といいます。実際には「この機能をメンテし、ドキュメントを書き、テストし、これから二十五年面倒を見てほしい」という要求だからです。
Linusの有名な言葉に、Freeは無料のビールか言論の自由か、というものがあります。Hipp氏はもう一つのFree——「無料の子犬」を挙げます。「ほら、無料の子犬をあげるよ」。一日の終わりに小屋に子犬が増え、捨てられない。道徳的に最期まで世話する責任が生まれる。Pull Requestは、その子犬を渡されるのと同じだ、と。
「無料の子犬は要らない」——それが彼の結論です。
これからどう見るか
成長率の話もPRの話も、結局は価格決定力とメンテ責任の話です。情報やコード提出は安くなりましたが、何を受け入れ長期で抱えるかの判断は希少です。一人会社は、1000 True Fansに近い高価値な関係を育て、無料に見える「子犬」を無制限に受け取らない方が、システムとしての価格決定力を残せます。トラフィックを追い回すより、深い井戸の顧客と、捨てないプロダクト境界を選ぶことがレバレッジになります。
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