Token費用は負担しきれない——そして脆弱性報奨金の終焉
Token費用は負担しきれない
先週、OpenClaw(ロブスター)の創業者ピーター・スタインバーガー(Peter Steinberger)が、自身のToken使用量を公開しました。
自慢のためではなく、メニューバーの小さなツールCodexBarを紹介するためです。このツールはToken使用量を集計し、対応する費用を算出できます。
さて、彼はどれだけTokenを使ったでしょうか。

スクリーンショットによれば、1か月で760万リクエスト、消費Tokenは6030億。設定料金で換算すると、これらのTokenは**約130万ドル(約1.95億円)**に相当します。
つまり、彼のAIプログラミングは平均で1日約4万ドル(約600万円)以上かかる計算です。
もちろん、これは実支出ではありません。彼はOpenAIの社員で、社内Tokenを無制限に無料で使えるからです。
しかし使用量そのものは本物です。大半の企業はTokenを外部購入します。もしプログラマ1人が毎月数千億〜1兆規模のTokenを使うなら、会社はいくら払うのか——彼の例で試算できます。
1人で月約130万ドル(約1.95億円)、年換算で約1560万ドル(約23億円)超。これが旗艦モデルを制限なく使わせたときの会社負担です。
安いモデルに替えると、国内最安のオープンソースモデルは海外旗艦のおよそ1/30〜1/50。年なら約400万〜600万ドル級ではなく、およそ数千万〜1億円弱程度まで下がります。
結論として、制限なしで使わせると、プログラマ1人あたり年に最低でも数千万円規模のToken費用がかかります。米国旗艦なら億単位まで一気に膨らみます。
コストを抑える手段は主に二つ。月額パッケージ(大規模案件には足りない)か、自前でオープンソースモデルを立てる(ハード費用は安くなく、最強モデルはまだ非公開)かです。
総合すると、企業はほぼ確実に制限を設け、外部モデルの無制限利用を認めないでしょう。給料に加え、人あたり年数千万円級のTokenが乗れば、開発コストは爆発します。
外部モデルの無制限APIをプログラマに提供している会社の話は、少なくとも私は聞いたことがありません。逆に、費用が高すぎてAIプログラミングを引き締めた例はいくつか知っています。
例えば配車大手のUberは、今年の頭4か月で年間**約34億ドル(約5100億円)**のAI予算を使い切り、利用制限に入りました。

Microsoftも費用超過でClaude Codeをやめ、自社ホスティングのOpenAIモデルへ切り替えました。

UberやMicrosoftでさえ巨額のToken費用に耐えられないなら、大半の企業も耐えられないでしょう。
AIプログラミングは聞こえが良いですが、請求書を見た瞬間に会社は目覚めます。AIプログラミングは、いまのところ人間のプログラマよりはるかに高いのです。
ではAIはプログラマを置き換えるのか。大規模ソフトを抱える企業では、コストの壁があり、少なくとも現段階では大規模置換は起きにくい——と私は見ています。将来Token単価が大幅に下がれば、話は別です。
脆弱性報奨金計画の終焉
TursoはGitHub上のオープンソースなクラウドデータベースです。

発見者に**1000ドル(約15万円)**を出す報奨金プログラムがあり、うまく回っていました。ところが、大規模モデルで脆弱性を探せるようになってから様子が変わりました。
リポジトリのPRページ(外部からのコード提出)は、次のような状態になっています。

報奨金目当てで「脆弱性」提出が氾濫し、中身はゴミバイトの注入や設定ミスで動かないものばかり、というケースが増えました。
開発チームは疲弊し、PRを閉じても提出者がAI生成の長文で「私が正しく、あなたたちが間違っている」と反論してくる——という状況です。

結局チームは報奨金計画の終了を発表し、脆弱性提出やPRに賞金を付けないことにしました。
ゴミコンテンツを出す側は1分で提出できるが、こちらは読む・理解する・返答するのに何時間もかかる。しかも生成速度はほぼ無限だ。
自動化でPRをフィルタすることもできるが、賞金が絡むとAIコード提出の動機が強すぎて、延々と議論したり同じPRを開き直したりする人が後を絶たない。
伝統的な脆弱性報奨金は、AI時代にはうまく回らない可能性が高い、という教訓です。今後は「見つけても賞金なし」が普通になるかもしれません。それがオンライン攻撃の増加につながるかどうかは、まだ分かりません。
これからどう見るか
情報としての「コード」や「脆弱性報告」は安くなりましたが、どこに何円かけるかという独立した判断は、むしろ希少です。個人や一人会社は旗艦モデルの無制限利用で大企業と殴り合うより、安いモデル・自前ホスト・月額枠の使い分けと、信頼できる読者・クライアントとの関係にレバレッジを寄せる方が現実的です。報奨金のように「誰でも出せる入口」はAIに最適化されると壊れやすいので、差別化は審査の味とニッチな知見の所有に移ります——小さな池で深い井戸を掘る発想です。
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